INDEX

広報 日造協 2006年5月10日 第386号

1面

都市公園法 施行50周年など今年度は節目の年に
 平成18年度
全国都市公園・緑化・緑地保全主管課長会議を開催

第17回 全国「みどりの愛護」のつどい
国営木曽三川公園で開催 1,600人が参加
平成18年春の褒章・叙勲
正本良忠 氏、阿部八雄 氏、鵜池政雄 氏
お知らせ
 平成18年度通常総会 東京・赤坂で6月22日

【樹林】
 日本人特有の自然との付き合い   (社)自然環境共生技術協会会長 高橋 裕(東京大学 名誉教授)

2面

【技術レポート No.018】
 造園CPD制度最新情報について  
(社)日本造園建設業協会技術課長  

3面

GW各地の公園にぎわう国営昭和記念公園みどりの文化ゾーン
 新たにカフェもオープン

 

【緑滴】
                       西武造園㈱ 山本 正之

 

【麹町箱】
 元気ひょうごの実現めざす !      兵庫県支部

4面

【総・支部だより】

 失敗例から学ぶ電子納品講習開催                 北海道総支部

 フラワードーム2006 名古屋国際蘭展あいち花フェスタを終えて 中部総支部
 ビオトープ研修会開催 今後の可能性にも示唆           沖縄総支部

 

【事務局のうごき】

 

1面

 

都市公園法 施行50周年など
今年度は節目の年に


平成18年度
全国都市公園・緑化・緑地
保全主管課長会議を開催

  平成18年4月20日、国土交通省10階大会議室で、全国の地方公共団体の公園担当主管課長及び公園関係の公益法人等の担当者を集め、平成18年度全国都市公園・緑化・緑地保全主管課長会議が開催され、事業予算概要をはじめ、国営公園事業、都市公園における遊具の安全確保、地球環境問題等への対応についての説明が行われた。
 会議は冒頭、小川公園緑地課長が、今年度は、都市公園法施行50周年、国営公園30周年、古都保存法40周年、また、チェンマイ国際園芸博覧会の開催など、節目の年であるとのあいさつがあった。
 公園緑地課幹部の紹介の後、「平成18年度都市公園・緑地保全等事業予算の概要」「国営公園事業について」「コスト構造改革の推進について」「都市公園の安全確保について」などを望月課長補佐が説明。
 その後休憩を挟んで、角南緑地環境推進室長があいさつ。
 社会資本整備審議会都市計画・歴史的風土分科会にて古都保存法の理念を全国展開すべく現在検討中であることなどを紹介した。
 その後「地球環境問題等への対応について」として加藤課長補佐が、京都議定書目標達成計画における都市緑化等の位置づけ、ヒートアイランド対策の動き、外来生物法の施行について説明。
 「国営公園事業」、新規事項等として「地域防災拠点となる防災公園の創設」「都市再生機構の行う公園事業」等を鹿野課長補佐が説明。
 「事業の適性な執行、顕彰制度、植樹保険制度の活用について」等を古澤企画専門官が説明した。
 特に植樹保険制度の活用については、引渡し後の発注者の適切な管理がなされない事を原因とする枯損が多く、引渡し後の発注者の適切な管理が重要であるとの説明があった。

第17回 全国「みどりの愛護」のつどい
国営木曽三川公園で開催
1,600人が参加

祝いの言葉を述べられる皇太子殿下

 第17回全国「みどりの愛護」のつどいが4月22日、愛知県一宮市の国営木曽三川公園三派川地区センター(138タワーパーク)で開かれた。
 「みどりの愛護」のつどいは、国土交通省、愛知県、名古屋市、一宮市、7公園緑地管理財団、7河川環境管理財団の主催、全国知事会、全国市長会、全国町村会の後援で、緑の存在が鮮やかに意識される春季に、都市緑化について広く国民の理解と協力を得ることを目的に、「春季における都市緑化推進運動」の中心的行事として実施。全国の公園緑地の愛護団体、道路や河川等の愛護活動を通じ緑の保護育成を行っている団体、地域の緑化・緑の保全団体等の緑の関係者が一堂に集い、広く都市緑化意識の高揚を図り、緑豊かな潤いのある住みよい環境づくりの推進を目指すもの。
 当日は、皇太子殿下御臨席のもと、公園緑地や河川の保全など、地域の緑化に取り組んでいる団体関係者約1600人が参加し、活動事例の紹介や功労者の表彰が行われた。
 皇太子殿下は、「地球規模での緑の保全と育成が人類共通の喫緊の課題となっている現在、緑を守り育てていくことは私たちの重要な責務」、合わせて「みなさんのたゆみない努力に敬意を表します」と祝いの言葉を述べられた。
 その後、会場内で殿下による記念植樹が行われた。

平成18年
春の褒章・叙勲

正本良忠 氏、阿部八雄 氏、鵜池政雄 氏

 当協会から3氏が受章 平成18年春の褒章、叙勲受章者が発表され、当協会からは黄綬褒章を正本良忠氏(73)(みずえ緑地㈱ 会長・広島県広島市)が受章された。
 また、叙勲は、旭日双光章を阿部八雄氏(71)(㈱東松園社長・千葉県松戸市)、鵜池政雄氏(73)(当協会佐賀県支部副支部長・㈱鵜池造園代表取締役・佐賀県佐賀市)がそれぞれ受章された。
 なお、褒章伝達式は5月17日国土交通省本省で、叙勲伝達式は5月10日赤坂プリンスホテルで行われる。

お知らせ
平成18年度通常総会
東京・赤坂で6月22日

 平成18年度 通常総会を6月22日(木)、東京都千代田区紀尾井町1-12 の赤坂プリンスホテル五色1階・新緑にて開催します。
 会員多数のご出席をお待ちしています。

【樹林】
日本人特有の自然との付き合い

(社)自然環境共生技術協会会長
高橋 裕(東京大学 名誉教授)

 自然再生推進法が2003年(平成15)1月に施行されたのを契機として、わが国の自然再生も法的根拠を得て、新たな段階に入った。自然再生も自然共生も、いまや地球を挙げて人類が挑むべき最重要課題である。
 しかし、自然再生をわれわれが声高に叫んでいるのは、人類が産業革命以来、特に20世紀後半に、日本はじめ全世界で激しい開発に狂喜し、自然を著しく破壊したからである。もちろん、日本の戦後の高度成長によって、われわれの生活は急速に豊かになり、世界の大部分の国々は20世紀後半の開発によって経済は発展し、その生活水準は著しく向上した。
 開発はつねに自然の改変を伴う。場合によっては、自然の人類に対する猛威を和らげるために、積極的に自然を改造する。技術の進歩は、多くの河川事業で、蛇行河川を直線化し、新たに人工の放水路を掘削し、あるいはダムや堰を築いて、川の自然の流れをコントロールして治水や水資源開発を行う。
 しかし、これら河川事業は所期の目的を達しても、川の自然のリズムを乱したことにより、しばしば予期せぬマイナスの影響を及ぼす。河川事業が大規模化すればするほど、その成果も大きいが、マイナス効果も大きい。河床の土砂移動が変わり、ダム湖の堆砂、河川によっては河口部周辺の海岸決壊、あるいは水質変化、河川生態系の破壊などである。それも、河川が元来自然界の一部であり、自然の法則に支配されているからである。
 とすれば、自然再生事業においてはもちろんのこと、あらゆる開発事業において、それが原自然に与える影響を事前に予測して、それに対処することが必須の条件である。換言すれば“自然との付き合い方”である。河川事業に限らない。道路、港湾、都市開発から植林、農業開発、およそ大地に手を入れるあらゆる行為においても同様である。各地での環境破壊から地球環境悪化の根本的理由は、自然との付き合いの作法を忘れたからである。
 ところで、日本人は有史以来、複雑にして多様な自然条件に鍛えられて、自然との付き合いがきわめて巧みな民族である。日本のように四季が明瞭でその繊細な変化を鋭く感知し、それを喜びとする集団は無い。それが台風、津波、地震、火山などの猛威にも、損害を最小限に止める知恵を磨き上げてきた。いくたの伝統工法、住居の配置や住まい方、避難手法にそれが伺える。万葉集、枕草子に始まり、多くの日本文学は日本人特有の自然との見事な付き合いを証明している。その“再生”こそが、これからの“自然再生”に魂を吹き込む重要な鍵である。

2面

【技術レポート No.018】
造園CPD制度
最新情報について
(社)日本造園建設業協会技術課長 
            

 造園CPD制度が本格実施して2年目を迎えました。広報日造協の2005年4月から6月号で、また本部からのお知らせ(メール)でも随時情報提供をしてきましたが、今回は造園CPD協議会のWEB(ホームページ)からダウンロードできる造園CPD(継続教育)ガイドブックなどを基に、簡潔にポイントをまとめました。
1 造園CPDとは
〈造園技術者の能力開発を支援し、努力結果を客観的に評価するしくみ〉
 自己啓発に励む造園技術者のその努力結果を記録し、客観的に評価・証明するしくみです。
2 取り組み姿勢
 なぜ造園技術者は自己啓発・能力開発に取り組まなければならないのでしょうか?
 これは、造園CPD協議会が示すとおり(表1)で、本来の目的は、「造園技術者として、社会的使命を全うするために、常に自己研鑽せよ」ということです。ポイントを貯めることは重要ですが、それはあくまでも結果です。
 すでに造園CPD制度に登録している方も、新規に申し込まれる方も、以上の点を理解したうえで制度を有効に活用して頂きたいと思います。
3 CPD制度の活用
 本来のCPDの目的・意義は先に述べたとおりですが、現在様々な造園技術能力の評価基準として、CPDの活用が検討・実施されています。
 (1) 品確法をはじめとする公的制度との関係
「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)の施行により、発注者は「すべての公共工事において入札に参加しようとする者の技術的能力の審査を実施しなければならない」こととなりました。そのような中でCPD制度を積極的に活用しようという動きがあります。
 具体的には「公共工事における総合評価方式活用ガイドライン」で総合評価落札方式(簡易型)における配置予定技術者の能力の評価項目の例として継続教育(CPD)の取り組み状況の評価がとりあげられており、すでに各地でCPD制度を評価項目とする試行も始まっています(表2)。
 また、CORINS(工事実績情報サービス)でも、技術者工事経歴検索システムの登録項目に継続教育(CPD)が追加されました。建設系CPD協議会(11学協会)の中から5機関までの継続教育記録を入力できるようになり、造園CPD記録の登録も可能です。
 このように、技術者の評価基準として、CPD制度を活用する事例が増えています。
 (2) 各種資格制度との連携
 造園CPD協議会では、この制度が個人の技術向上を支援し自己研鑽の結果を証明することから、各種資格制度の受験条件や更新条件(たとえば登録ランドスケープアーキテクト)等に造園CPDの取得単位数を取り込むことなどの検討を関係機関と進めています。
4 取り組み事例
 造園CPDに登録したあとの、具体的な取り組み事例についてまとめました。
 漫然と取り組むよりも、目的を持ち計画的に取り組むことで、効率的なスキルアップが可能です。 
 下記は、造園CPD協議会が薦めているPDSサイクル(計画して【PLAN】、やってみて【DO】、その結果を評価・確認【SEE】し、それを次の計画【PLAN】に反映させる)による手法のポイントを紹介しています。詳細についてはガイドブックをご覧下さい。
 (1) 目標・計画を立てる 【PLAN】
 ①この1年で何を学習するのか? 大まかな方向性・具体的なテーマを決めて取り組む。
 ▼例えば、総合的なスキルアップ、得意分野の更なる充実、苦手分野の克服など
 ▼ガイドブックにある「4つの教育分野」や「4つの教育形態」を参考にすると目標・計画が立てやすい(図1)
 ②スケジュール、学習形態の検討
 ▼1年を通して比較的時間に余裕のあるときはいつか?
 ▼これまでの開催プログラムを参考に、目標・計画に合うプログラムが無いかをチェック。
 ▼参加学習型の認定プログラムが首都圏に集中し、地域によっては思うようなプログラムが見つからないという意見も良く聞きますが、造園CPDには4タイプの教育形態(右下図 参照)があり、地域に縛られることの少ない情報提供型、実務学習型、自己学習型という教育形態があることをお忘れなく。
 ▼最新情報を得るために、CPD協議会のメールマガジンを購読し、常に自分にあったプログラムが無いかチェックする。
 (2) やってみる 【DO】
 ▼目標、計画は当然ながら計画した時点でのものである。これに固執せず、当初の目標・計画に無くてもその時点での自分の興味やニーズに合ったものがあれば積極的に取り組むことが重要。そのためには自分の学習計画の分析が有効である。
 (3) 結果を評価する 【SEE】
 ▼目標・計画が達成できたか?(計画したプログラムに取り組めたか?)→ 取り組めなかった理由は? ▼具体的な成果が得られたか? → 得られなかった理由は?
 ▼目標のポイント数は達成できたか? → 達成できなかった理由は?
――などを評価する。(年度の終わりだけでなく、途中でも行い、計画の修正に反映させる) 
(4) そしてまた計画【PLAN】
 結果の評価は、次の年の計画・目標設定の大切なデータになります。造園技術者として常に能力向上を目指しましょう。
5 CPD単位の取得
〈単位(ポイント)取得シミュレーション〉
 ▼現場を持つ技術者が年間目標単位数の50ポイントを取得するのは容易なことではありません。理想は上記のようにご自分で計画をたてて実行することですが、最初は難しいかもしれません。そこで目安として、参考事例をご紹介します。
 ▼なお、この表は広報日造協4月号に同封済。また日造協のWEBからもダウンロードできます(表3)
6 各企業の対応
 日造協では、現場技術者がこの制度に取り組みやすいよう、CPD協議会に提案を行ってきました。
 この結果、企業内研修やOJTも単位取得の対象となりました。またこの制度は、技術者個人を対象としていますが、すでに述べたように、公的制度でも技術者の評価基準として、CPD制度を活用する事例が増えています。経営者の方には、この点を十分ご理解頂き、より多くの技術者に参加頂くよう、周知啓発にご協力をお願いしたいと思います。
7 手続き編
(詳細は、CPD協議会のWEBをご覧下さい)
 (1) 申し込み~本登録まで
 ▼造園CPD制度を利用するためには入会手続きが必要です。
 ▼すでにご案内のとおり、第一回目の申し込み手続きを受付しました(5/12締め切り。次回は8月頃を予定)
 ▼5/12までに申し込まれた方には、所属企業を通じて、8月頃に会員証と仮パスワードを送付します。造園CPD協議会のWEBより、各自会員証に書かれているID(12ケタ)と仮パスワードを使用して会員登録をして下さい。
 ▼WEBからこの会員登録をしないと、ポイントの反映ができませんのでご注意下さい。
 (2) ポイント登録方法
 ▼ポイントの登録は、プログラムの種類により会員証(カードリーダー利用)で行う場合とWEBで自己登録する場合に分かれます。
 ▼現在会員申し込み中で、お手元に会員証が無い場合は、会員証が届いた後に、WEBで自己登録を行います。
 ▼会員証で記録する場合も、WEBで自己登録する場合も参加したことを証明する証拠書類(レジュメ、領収証、学習結果等)をお手元に保管して下さい(表4)。
 ※1「平成16年度暫定実施の資料」の中にある、記録簿をダウンロードして記入・保存し、会員証が届いたら、本登録のあとCPD記録の自己登録画面より登録する。
 (3) 造園CPD実施記録登録証明書発行の申請方法
 ▼本格実施(平成17年度以降分)と暫定実施分(平成16年度分)で申請方法が異なります。
 本格実施期間(平成17年度以降分)はすべてWEB上で手続きを行います。
 暫定実施期間の分は発行申請書をWEBよりダウンロードし、記入・郵送。
 ▼発行手数料はどちらも1通につき500円
 ※証明は年度ごとの発行になります。2年分必要な場合は、手数料は1000円となります。 
(4) その他
 ▼会員証の紛失・再発行→ 造園CPD事務局へ連絡する 
TEL03・3265・8567、FAX 03・3265・8569(問い合わせ時間は午前10時半~12時、午後1時から4時まで)
 ▼仮パスワードを忘れた場合 → 日造協会員のCPD会員―2の方は日造協へお問い合わせ下さい
 ▼(本登録後の)パスワード、IDを忘れた場合 → 造園CPDの会員ログイン画面より問い合わせをして下さい。
8 おわりに
 造園CPD制度はまだ始まったばかりであり、日々進化(深化)し続けています。
 今も造園CPD協議会では、日造協も含めた造園・緑化関連各団体が一致団結し、制度の更なる充実・完成を目指して活動しています。
 すべては、日々自己研鑽する日造協会員をはじめとする造園技術者のためです。またそのことはみどり豊かな美しい社会を創ることにつながります。
 造園技術者の方は、社会的に大変に意義・価値のある仕事に携わっているということに誇りを持ちながら、この制度を活用して、さらに技術者としての社会的使命を十分に果たしていただければと思います。
造園CPD協議会のホームページは日造協ホームページから入れます。
https://www.jalc.or.jp

3面

 

GW各地の公園にぎわう
国営昭和記念公園みどりの文化ゾーン
新たにカフェもオープン

屋上には大木も植栽され、緑の丘を形成している

 みどりの日(4月29日)を中心に各地でさまざまな緑化イベントが催される中、国営公園でも無料開園などを実施し、多くの来場者でにぎわった。このうち昨年11月に新しく「みどりの文化ゾーン」が開園した国営昭和記念公園は、ゾーン内の花みどり文化センターに、新たなカフェもオープン。GWには春の無料開園とも合わせて、多くに人が訪れた。
 みどりの文化ゾーンは、国営昭和記念公園の最後の未整備エリアで、同公園が育んできた緑の文化の情報発信、市民や関係諸機関との交流拠点として活用できるよう「都市における『緑の文化』の創造と発信」を基本テーマに整備。イベント・講習会・展示会等の開催や、関係機関・団体の交流の場としても利用できる「花みどり文化センター」や「ゆめひろば」が設けられた。
 特に、緑化された屋上「浮遊の庭」は、柔らかくうねる屋根の形を生かして起伏する地形をつくり、南側の「そよぎの丘」からつながる緑の丘となってゾーン中央の「ゆめひろば」を囲み、散策、休憩、市街地の眺望などゆったりと楽しむことができる。
 緑化規模は5278㎡で、公園内から移植した大木や水辺空間も配し、草花や地被植物で季節感のある植栽としたほか、側面も室内への日差しを和らげるためのシェード植栽がなされ、構造物上に設ける立体的な公園の先駆けとなる空間が創出されている。
 詳細はhttp://www. showapark.jp

【緑滴】
西武造園㈱ 
             山本 正之

 身近な人に是非読んで欲しいと思う本に出会ったので御紹介したい。それは『国家の品格』(藤原正彦著、新潮新書)である。日本人として自らをどう認識し、日本の国が世界に対してどうあるべきかを、明快に主張している。著者は外国での生活経験がある数学者で、専門の分野の知見も織り込みながら身近な例も引きつつ独自の見解を展開しており、興味深く読める。
 8章から成っており、第1章「近代的合理精神の限界」と第2章「論理だけでは世界が破綻する」で論理が必ずしも問題を解決しないことを言い、第3章「自由、平等、民主主義を疑う」では、自由という概念や民主主義の成り立ち方に歴史的な考察を加えた上で、「国民は永遠に成熟しない」とか「差別を無くすには平等ではなく惻隠を」などと持論を大胆に展開し、論理とか合理に頼りすぎてきたことが、現代世界の当面する苦境の真因としている。
 これに対する解決策として、ここがこの本の最重要ポイントだと思うが、日本人が古来から持つ「情緒」あるいは伝統に由来する「形」というものの見直しを提案している。「論理」に対して「情緒と形」をぶつけている訳で、私はこの章の内容に特に惹かれるものを感じた。「情緒」とは日本人が古来から持つ、もののあわれなどの美しい心の様相であり、「形」は武士道精神から来る慈愛、誠実、忍耐、正義、勇気、惻隠、名誉、恥、卑怯を憎むなどを言っている。
 日本人の情緒については、自然に対する些細な感受性を第一としている。外国人がこのことを認めてくれた例として、昭和の初め頃、東京のイギリス大使館の外交官の夫人で8年間東京で過した人の記述として日本の庭師の話が紹介されている。本文のままに引用すると、「イギリスの庭師の場合、「楓をあそこに植えてくれ」と注文すると、言われたところに穴ぼこを掘って、楓をポンと植えて、お金を貰って帰ってしまう。ところが日本の庭師の場合、まず家主の言うことを聞かないという。あそこに植えた方が良い、などと逆に提案してくる。そして一本の木をあらゆる角度から眺め、庭師自身もあっちこっちに立ち位置を変え、目を丸くしたり目を細めたりして、散々に見た後、最も美しく、最も調和のとれた所に弟子たちに身振り手振りで指示を与え植えさせる。日本の庭師というのはオーケストラの指揮者のようだ。「見ていてわくわくする」と書いています。」
 とあり、我々造園関係者には誇らしくも嬉しい記述である。
 最終章の「国家の品格」では、戦後の経済繁栄と引き換えに国家の品格が大きく失墜したとし、その対応として、現代を荒廃に追い込んでいる自由と平等より日本人固有の情緒や形の方が上位にあることを、日本は世界に示すべきとしている。 
 国際化の時代にあって、巨額の海外援助もしているのに何となく自信を持ち切れない、という思いの人は案外多いのではないだろうか。この本はそういう人が自分の考え方と対比して読むと非常に有益と思う。仲間で読後感の交換なども盛り上がるのではないだろうか。是非お勧めしたい一冊です。 

【麹町箱】
元気ひょうごの実現めざす !
             兵庫県支部

  平成18年度が新たにスタートしました。ここでは兵庫県の今年のトピックスなどを紹介します。
 まず、第61回国民体育大会「のじぎく兵庫国体」が、9月30日から10月10日まで兵庫県の全県下を会場に開催されます。兵庫県では3回目ですが、半世紀ぶりの開催です。今回は、阪神・淡路大震災からの復興支援への感謝を表すとともに、夏季・秋季大会一本化開催の記念すべき大会でもあります。また、引き続き10月14日から16日まで、第6回全国障害者スポーツ大会「のじぎく兵庫大会」も開催予定で、全国から多くの皆様を温かくお迎えできるよう準備が進んでいます。
 その国体の水泳、シンクロナイズドスイミングの会場にも予定されている「尼崎の森中央緑地」のプールを中心とするスポーツ健康増進施設が、5月31日に開園します。兵庫県では、かつてのわが国の発展を支えた重工業地帯である尼崎市南部臨海地域約1000ヘクタールを再生するため、環境共生型のまちづくりとして「尼崎21世紀の森構想」に取り組んでいますが、尼崎の森中央緑地はそのリーディングプロジェクトに位置付けられているものです。スポーツ健康増進施設は、その中核施設であるとともに、兵庫県におけるはじめてのPFI事業として、民間活力の導入により整備が進められており、50mプール(冬季はアイススケートリンク)、25m温水プール、フィットネス施設、グラウンドゴルフ、フットサルコート、ウォーターパークなどが整備されます。
 また、本年11月1日から3ヶ月間、タイ王国チェンマイ市で開催されるタイ王国国際園芸博覧会「ロイヤル・フローラ・ラーチャプルック2006」に、日本国政府の屋外庭園とは別に、国際庭園ゾーンに京都府、大阪府と共同で三府県共同出展として日本庭園を出展することとしています。タイ王国と日本との密接な交流を踏まえるとともに、また、両国の産業、観光、文化等、今後一層の交流促進を期待し、関西文化を象徴する庭園となるよう検討、準備が進められているところです。
 このように「元気ひょうご」の実現に向け、公園緑地や緑化の取り組みが進んでいます。                               (兵庫県支部)

4面

【総支部だより】

 失敗例から学ぶ
電子納品講習開催
            北海道総支部  

庭園出展コンテスト デザイン部門金賞を受賞した5団体合同フォーラムの出展庭園

  当協会北海道総支部は平成18年2月24日(金)、「失敗例から学ぶ電子納品」講習会を開催し、参加者は21名であった。
 この講習会は、「電子納品」が国土交通省(北海道開発局)ですでに2001年から施行がなされているが、運用にあたってはかなり扱いづらい面があるとともに、北海道の地方自治体においても平成20年頃から本格運用の開始が予定されているため、当総支部の会員の研鑽をはかるために行ったものである。
 参加者は実際に電子納品の実務を担当している人たちで、普段から問題意識や悩みなどを抱えており、講習会に対する意気込みは真剣そのものであった。
 講師には、電子納品のソフトを扱っている建設ソフト㈱のJACIC認定:CALS/ECインストラクターである野村淳氏にお願いした。
 講習会の内容としては、単にテキスト的なレクチャーでは、担当者が実際に対応する時に運用・活用することが難しいため、野村氏のこれまでにおける経験や失敗談を含めた独自のレジュメ「失敗例から学ぶ電子納品」を使い、要領良く説明がなされ参加者も熱心に聞き入っていた。
 まずは、要領・基準のポイントとして、
 ①電子納品保管管理システムにデータを登録する為のパソコン的な規則
 ②検索する為の情報
 ③ウィルスチェック
 ④CAD製図基準(案)
などの説明がなされ、この中で特に重要なことは、どの書類を電子納品するのか、どのソフトで書類を作成するのか、などについて必ず事前協議を行い手戻りのない電子納品を行うことであると力説していた。
 よくある失敗例としては、
 ①要領・基準の間違い
 古い電子納品ソフトを使い、納品データを作成したら作り直しとなった。
 (要領・基準は頻繁に改定されているので、最新のソフトを使用する必要がある)
 ②打合せ簿ファイルをエクセルで数回分まとめて保存した。
 (打合せ簿は1回毎に1ファイルとして管理する)
 ③写真管理情報に使用禁止文字を使いエラーがでた(間違って使用してしまう禁止文字「Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ…」。「①②③…」「㈱」等)
 ④解像度が高いデジタルカメラで高画質に撮ってCD―R枚数が多くなった、日付情報を間違えた、同じ電子納品であるのにカメラの違いによる品質の違いが出てしまった(1ファイルのデータが大きいと嫌われる等)。
 ――などであり、失敗しないために気をつけなければならない必須要件として
 ①どの基準に準じるのかをきちんと確認すること
 ②事前協議は必ず行うこと
 ③データのバックアップは必ず行うこと
 ④要領・基準を理解し、使用しているソフトの特性を考えデータの管理・保存を行うことが説明され、参加者の熱い拍手を受け盛会に終了した。
 また、最後に参加者の「講習会アンケート」が行われ、集計結果をみると「よく理解できた」「内容はちょうど良い」「教え方は分かりやすい」が全員の回答であった。                   (北海道総支部 事務局長・高橋 勲)

フラワードーム2006 
名古屋国際蘭展あいち花フェスタを終えて
              中部総支部

名古屋フラワードームの会場内のようす

  ラン、春の鉢花、切花、観葉植物等あらゆる植物で名古屋ドームが埋め尽くされた1週間。
 今回2回目の特別展示の依頼を受けることとなりました。
 テーマは「華色宮殿」。前回同様に巨大なドーム中央に常設されたセンターリングを使用し、会場全体の修景の核となるディスプレイを創りあげるというものでした。
 花の新しい魅力発見とテーマから引き出されるイメージをいかにかたちにしていくか。
 今回は花の色を美しく魅せるために、純白の2種類の布で天までそびえたつ宮殿と、それにかかる雲を演出しました。
 そして、宮殿内に回遊式の散歩道を作り、通り抜けする途中に4色のエリアを設定し、ランをメインにデコレートされたオブジェに出会う。
 そんな非日常の空間で花とファンタジーを体感できるという、老若男女の訪れるイベントの要素として、楽しみのある空間創りを目指しました。
 ディスプレイ施工当日は、蘭展組織委員会の方々、日造協のメンバー、その他数々のご協力のもと完成に至り、日頃の造園的な観点と展示ディスプレイとしての見せ方の相違について考えさせられる良い経験をさせていただきました。
 また、植物生産や流通に携わる各業界の方々との交流や意見の交換で大変興味深い時間を過ごし、単に仕事をこなす以上の体験だと感じました。
 このような貴重な体験を機に今後も造園という仕事を通して、空間の中に生まれる新しい植物と人の関係を見つけていこうと思います。
                        (中部総支部 事務局・邑松みどり)

ビオトープ研修会開催
今後の可能性にも示唆
            沖縄総支部
映像による座学と野外での研修、実地研修が行われた

 平成18年3月25日に琉球大学資料館である風樹館において琉球大学の学芸員である佐々木健志氏を講師に「ビオトープ研修会」を当協会沖縄総支部技術委員会の主催により行いました。
 研修会は15時より17時までの2時間を使い、前半の1時間は「ビオトープとビオガーデン」と題して、ビオトープの語源からその概念や目的などの基本事項から、ビオトープの生態学的な位置づけ、類別とその具体例などに併せて、企画設計、施工、維持管理するにあたっての専門的な知識の必要性などにつて映像を併用して講演していただくなかで、ビオトープ計画管理士、ビオトープ施工管理士などの資格の概要ついてまでと、広範囲に講演していただきました。
 また併せて、県内で実際にビオトープとして作られた施設に対して映像を用いて具体的に解説していただきました。
 そして後半の1時間は、風樹館裏に佐々木講師と学生により実際に作られたビオトープを一つ一つ解説していただきながら、会員一人一人からの質問を受ける形で、ビオトープの実際について具体的に解説してもらいました。
 また、蝶の食草や生態などにもふれ造園業界がビオトープの知識技術を習得、深めその概念を取り入れた形で自然再生、環境保全に取り組んでいく必要性を訴えられ、当業界に対する、大きな課題を示された形となりました。
 今回の研修は、ビオトープに対する知識技術の習得の場となったのはもちろん、公共工事縮減など造園業界を取り巻く社会環境が厳しい方向に向かうなか、当業界の社会的役割と課題そして可能性を示唆する有意義なものとなったと感じました。            (沖縄総支部 技術委員長・下地 浩之)

事務局の動き  【4月】
6(木)・ 第11回財政・運営検討特別委員会作業部会
6(木)・ 「広報日造協」編集会議
7(金)・ 全国都市緑化祭
11(火)・ 佐藤国際交流賞部会
12(水)・ 建設物価懇談会
13(木)・ 正副会長・常任委員長会議
13(木)・ 第25回財政・運営検討特別委員会専門部会
17(月)・ 全国都市計画主管課長会議
18(火)・ 日本公園緑地協会国際委員会
20(木)・ 全国都市公園・緑化・緑地保全主管課長会議
20(木)~21(金)・AIPHスプリングミーティング(伊・ジェノバ)
22(土)・ 全国「みどりの愛護」のつどい
24(月)・ 第26回財政・運営検討特別委員会専門部会
29(土)~30(日)・瀋陽世界園芸博覧会開会式(中・遼寧省)
【5月】
9(火)・ 「広報日造協」編集会議
10(水)・ 第27回財政・運営検討特別委員会専門部会
10(水)・ 基幹技能者の評価・活用等検討委員会
16(火)・ 事業委員会(全国)
16(火)・ 雇用・能力開発機構ヒアリング
22(月)・ 第28回財政・運営検討特別委員会専門部会
23(火)・ 総務委員会(全国)
24(水)~26(金)・エコ・グリーンテック
24(水)・ 建設業振興基金会議
25(木)・ 日本公園緑地協会総会
27(土)~29(月)・瀋陽世界園芸博覧会審査委員会(中・遼寧省)