景を創る

日本の造園技術を知る

VHSビデオ41分、1997年発行、価格:一般\3,000 会員\2,000
企画・制作:日本造園建設業協会、協賛:日造協京都府支部 、協力:京都府造園建設業協会、京都市・京都市都市緑化協会

 平成6年京都は、平安建都1200年を迎えると同時に第11回全国都市緑化フェアを開催する運びとなりました。そこで京都市では会場でもあり現在も尚整備の進められている梅小路公園(http://web.kyoto-inet.or.jp/org/k-midori/top.html)内の中心施設として日本庭園を作庭し、現在「朱雀の庭」と命名し、一般に公開されております。本ビデオは、この「朱雀の庭」の作庭過程を技術的観点から追いかけ、設計図書では表現しきれない、個と全体の調和をみごとに具現化する、日本の”造園の心”を余す処なく収録した作品であり、国の内外にその真髄を紹介する決定版と言えましょう。

 この「朱雀の庭」が立地する梅小路公園は、京都の都心部にあたり、旧国鉄梅小路貨物駅の跡地でもあり一方をJR線、周辺はビル・アパート等に囲まれ、日本庭園をつくるには決して恵まれた環境ではありませんでした。さらに庭園用地面積は0,9haと池泉廻遊式庭園としては十分な面積とはいえません。

 これらを背景に計画・設計・施工へと様々な試みがなされ、京都の緑の発信・案内基地として社会・生活に適合する新たな様式美の創出を意図し、過去の模倣的な庭園をつくるのではなく、人々の憧れのより自然な非日常の世界へのいざないを目指したのであります。

 今回の作業は、素材の選択から構成に至るまで大変な労力と時間を費やし、現場に於いてはそれら素材石や木や或いは草花の一つ一つの姿かたちをあるが如くの美の世界を構成すべくこだわりを持って創り上げた庭園です。

 縮景的な手法を使いながらも山石を大胆に組んだ中に杉林やモミジ、水流れを配し洛外の自然の景を都心に再現し、構成した【紅葉渓】。琳派のデザインを底流に構成し意外性のある非日常を意図した【水鏡】。京都の侘・寂の世界に対し新しい花の愛で方を提案した【花床】。あたかもこの庭園に自生したかのように植栽し、アカマツの持つやさしさ、幹肌の美しさ、林全体の線の美しさを味わえるよう優美に演出した【アカマツ林】従来の技法とは全く異なる手法をとり、極めて自然的な空間を表現し山渓の風情を現出させている【滝】。古くからある庭園技法のひとつであり、より素朴で細やかな情景を醸し出す【野筋】。

 これら現代的様式美を展開・構成し、京都にひとつの新しい空間を誕生させることができたのであります。それら一つ一つの作業はきわめて「工芸的」な美の世界へのいざないであります。京都の持つ伝統的な技法を基とし、新しい時代社会が求める様式美を生み出す。まさに伝統の継承と新たなる創生への展開が本庭園の目指す方向なのであります。

 伝統的な技法や手法を踏まえながらも、より新たな世界の創出を意図した「朱雀の庭」。 この庭園様式が技と心を込めて次代へと受け継がれて行くものを願うものです。

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